???エンジン復活計画/本編

photo1後にこのエンジンについてのヒストリーとエピソードです。
このエンジンは1983年型のパンタTT2、所謂レーシングパンタのエンジンで、新品の状態で当時私が勤めていたドゥカティショップにありました。そのショップが1983年の夏、鈴鹿8耐に参戦し、その時スペアエンジンとして、念の為に鈴鹿まで持って行きました。チーム自体はイギリスからスポーツモーターサイクルスのチームを招聘したかたちで、ライダーはトニー・ラッターとボブ・スミス、チーフメカはスティーブ・ウィン、というのが主なメンバーでした。まだ若造だった私を初めとする日本人スタッフがお手伝いというかたちで関わっていました。
チームはその時パンタベースの650ccと750ccのエンジンを1台ずつ持ってきていて、練習用に650ccエンジンを使い、予選と決勝で750ccエンジンを使う計画になっていました。

そんな予定で最初の走行を650ccエンジンで走り始めたのですが、走行開始2周目でエ ンジントラブルが発生します。後で判明した原因は、マロッシのキャブレターのファ ンネルを固定しているボルトが外れ落ちて、それがエンジンの中に吸い込まれてし まったということでした。当然ながら、たった2周で650ccエンジンはオシャカです。

さて、ここでどうするか考えましたが、このタイミングで虎の子の750ccエンジンの 投入はいくらなんでも無謀です。そこで念の為に持っていっていたTT2の600ccエン ジンが役に立ちました。これに載せ替えて予選まで走ってしまう事にしたのです。
という訳で、この時のレースで公式予選結果のタイムを出したのは600ccのTT2エン ジンだったというわけです。


の後決勝に向かって750ccエンジンにエンジンの載せ替えを行ったわけですが、一つ問題が発生しました。それはエンジンを載せ替えた場合、再車検が必要になるということでした。最初の車検では排気量のチェックは行いませんから、600ccエンジンでも車検に通る事は問題なかったのですが、予選後に載せ替えたとなるとそうは行きません。
レギュレーションの上限を超える排気量のエンジンで予選を走ったのではないかということになり、当然ながら降ろしたエンジンの排気量チェックが入ります。

当時のTTF1の排気量上限は750ccです。750cc以上の排気量のパンタなんてこの世に存在しねーよ、なんて言ってみたところで、鈴鹿の車検オフィシャルには通じるはずもありません。排気量を測られて600cc以下である事が判明すれば、それはそれでカテゴリーが違うということで大問題、たぶん失格です。

そこで我々の下した手は、日本人抜きで再車検に行ってもらう事でした。日本人の関係者がその場にいたら絶対事情を聞かれて排気量チェックされます。ですから外人だけで行って、とにかく何を言われてもわからないフリをして英語のスラングでまくし立てて車検オフィシャルを煙に巻いて来い、ということにしたのでした。さすが海千山千のスティーブ・ウィンさん、見事に、それもやすやすと再車検を通して来ましたね。
ニコニコして帰ってきて一言、「No problem!」ですって。

そんなエピソードのあったこのTT2エンジンですが、その8耐のレースが終わった後、私が個人的に会社から買い取り、はれて自分のものとしたのでした。当時の金額としては結構高かった覚えがありますが、私も若かったし、どうしてもこのエンジンが欲しかったという訳ですね。


の後暫く、私はこのエンジンを研究しながらサンデーレース等で遊ばせてもらいました。ハリス製のレーシングパンタフレームにこのエンジンを載せて、筑波やFISCOを走り回りました。手に入れてあまり時間の経たないうちに、オリジナルのバルブ、ピストン、シリンダー等は外して、社外品のバルブやピストン、鋳鉄スリーブ入りの改造シリンダー等を組み込んで走るようになりました。当時はそうした部品の入手もかなり容易だったと記憶しています。おかげでオリジナルの部品が良い状態のまま今まで残っていたという訳です。

してある日の晩のことでした。バイクリフト(先日まで20年間使い続けて来たアレです)の上にこのバイクを載せて持ち上げたまま、私は傍らで何かの作業をしていました。深夜の静けさの中で、その時いきなりバイクから「パキッ」っと大きな音がしたのです。

今のは何?と思いバイクを点検しましたが、何も異常はありません。ちょうどエンジンを開けてオーバーホールをしようとしていた矢先の事でした。そして数日後エンジンを開けて、その音の原因が判明するのです。クランクケースの中央辺り、クランクベアリングの周りにはっきりとクラックが入っていました。
この事件を期に、既に時代はパンタも750ccエンジンの時代に入っていた事もあり、このエンジンはバラバラに分解されて箱に詰められて保存される事になったのでした。
とは言っても、部品によっては他のレース用エンジンに流用されて使い続けられたものもありましたが。

まい込まれてから殆ど20年に近い月日が流れ、長い眠りの後、レストア作業が開始されたのですが、今回のレストアでは、そうした他のエンジンに流用していた部品を探し出すのに、TFDで眠っていた実に5基のエンジンを分解しました。分解したのは主に750ccのパンタエンジンでしたが、フライホイールのフランジなどは851改943ccレーサーのエンジンに使ってあったりして、探し当てるのに苦労しました。でも運良く売却してしまったものは皆無だったので、無事にオリジナル部品をそろえる事が出来たというわけです。




後に、やっと組みあがったこのエンジンですが、当面使用する予定はありません。このまままた何年も放置する事になっても、それはそれでエンジンにはあまり良いことにならないと思います。そこで、もしこのエンジンをどうしても欲しいとお思いになる方がいらっしゃれば、売却を考えています。転売目的ではなく、自分で趣味の範囲でエンジンをいたわりながらコンディション維持のために時々サーキットを走行してくれるような方が希望です。
ご興味の有る方はメールでお問い合わせください。


◆このエンジンはお陰様で無事新しいオーナー様の元に旅立ちました。興味を持って下さった方々に御礼申し上げます。


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